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大麻経験者が大麻の危険性を伝えるブログ

初めての大麻で最悪のバッドトリップ アムスでGo

初めての大麻でバッドを経験

アムステルダムのコーヒーショップで初めて大麻を吸い、キマりすぎてBadになり、店員に助けを求め、死にそうになりながらアムステルダムの町を彷徨った。

あれほどキツい経験をしたのは人生で初めてであった。 自戒の念を込めて、振り返りたい。

アムステルダムへ向かう

ドイツの自宅から、車でアムステルダムへと向かった。
アウトバーンを延々と進み、9時間弱で到着。
長旅だったが、車窓は終始美しい田園風景であった。
アムステルダム中央駅前の地下駐車場に車を停め、ホテルへと向かう。

アムスはホテルが狭くて高い

アムステルダムは世界的な観光都市であり、宿泊費は安くない。
たった三畳間の広さにベッドとシャワーを無理やり詰め込んだだけの簡素で窮屈な部屋で150ユーロ。安くはないなと思った。

受付で鍵をもらって部屋に入り、簡単に荷解きをすると、早速街に繰り出した。

アムステルダムの街

現在は閉鎖してしまったが、以前はアムステルダムのcoffe shop情報をまとめた「アムスでGo」という素敵なサイトがあった。
このサイトで事前リサーチした情報を元に、アムステルダムの街を徘徊した。

スマホ普及以前からの習慣で、旅行で初めての場所を訪れる際には、事前に地図を熟読し、主要な観光スポットや宿の場所を頭に入れる。
そして実際に街を歩き回って体で覚えるようにしていた。
今回もアムステルダムの街を相当歩き回り、地理感をほぼ習得した。
この習慣が後々身を助けることとなる。

アムステルダムの中心部は、平行に張り巡らされた運河によって方角が掴みやすく、なおかつ空がひらけているので開放感がある。

歩道が整備されている&車の侵入が少なく、歩行者にとって歩きやすい。
主要スポットも中心部に集中しており、旅行者にとってとても優しい街だ。
このわかりやすい街の造りも、後の災難を軽減してくれる要素となる。

コーヒーショップに踏み込む

コーヒーショップは至る所にあるが、中心部の店舗はヨーロピアンなカップルで賑わっており、初心者である東洋人が単身で踏み込むには抵抗感がある雰囲気であった。

今思えば、初めてなのだからジョイントをテイクアウトしてホテルで窓を開けてこっそり吸えば良いものの(どこも禁煙だが)、当時はなぜかその発想がなく、コーヒーショップ内のテーブルで優雅にプカプカとふかすことしか考えていなかった。
つまり、その程度のゆるい効能としか想像していなかったのだ。

街歩きを続けていくと、中心部から少し離れたところに、私にとって良さげな(=そんなに賑わっていない)コーヒーショップを見つけた。

3 floors coffeeshop

1階は販売カウンターのみで、ラウンジは2階以上にあるようだ。
ハローと言って入店し、カウンターのマスターの前に立つ。

メニュー表を見ながら、「初めてなんだけどどれがいいですか」と素直に聞く。
メニューの一番上の「White Widowがいんじゃない」と言われ、ジョイントを1本購入。500円ほど。

ここでホテルに戻ればよかったのだが、そんな発想は毛頭なく、奥の階段で2階へ。
数人の客がいた。
せっかくだからもっと上に行ってみようと思い、狭く急な階段で3階へ。
客は数組。
大麻の煙で視界が霞む紫煙の世界だ。

左手前のソファ席に座ることにする。
綺麗すぎず、汚すぎず、店内は窓からの明かりのみで薄暗く、枯れた雰囲気の落ち着く空間だ。

周りを観察

いきなりジョイントには手を出さず、まずは当時吸っていたMarlboro Lightに火を付ける。
タバコを吸いながら気を落ち着けていると、隣の席に地元の若者らしい3人組がやってきた。

しばし、彼らを観察する。
私のように既製品のジョイントではなく、緑の乾燥大麻草そのものを購入していた。
持参の容器(クラッシャー)に適量をちぎって投入すると、コリコリゴリゴリと回し始めた。
蓋を開け、粉々になった大麻をタバコの紙に適量乗せ、くるくると巻き、舌で紙を濡らして閉じると、綺麗なジョイントが出来上がった。
そしてさっと火をつけ、くゆらせている。

慣れたものだなぁと感心した。

いざWeed

いよいよ私自身も覚悟を決め、キャップからジョイントを取り出す。
青臭いツンとした匂いを嗅ぐ。これが大麻か。
口に咥え、ライターで火を付ける。

いきなり吸い込むとむせやすいとの情報がインターネット上にあったので、慎重に吸う。
どこまで肺に入れていいのかわからないので、まずは口の中に留める。
タバコとは異なる、独特な香りだ。

次に、少し肺に入れてみる。
ツーンとした刺激を伴う吸引体験である。
すぐに吐き出し、しばらく様子を見る。
特に変化はない。

そしていよいよ、ネットの情報にあった、正しい大麻の吸い方を実践してみる。
「しばらく肺の中に煙を留める行為」に挑戦だ。

火のついたジョイントを勢いよく肺まで吸い込み、しばらく息を止める。
そして、吐き出す。
大麻の成分を最大限吸収する行為だ。

煙を吐き出したのち、しばらくソファに保たれていたが、特に変化が起きない。
私にはあんまり効かないのかな、と思いつつ、ジョイントを吸い、息を止め、吐き出す。

そんなことを繰り返しているうちに、突然、その時はやってきた。

初めての大麻でガンギマリ

突然意識が狂い始めたことに気がついた。
穏やかな移行ではなく、いきなり別次元へのテレポーテーションだった。

天井付近に設置されたTVの映像がぐるぐると周りだした。
耳に入ってくる環境音を処理できなくなり、無音状態となった。
そして、自意識が全面に押し出てきた。
無意識状態がなくなり、自分自身の一挙手一投足に意識が向くようになった。
ずっと内面と向かい合う状態となった。

訳がわからない状態になり、精神的に少しパニック状態となった。
落ち着こうという判断から、テーブル上のコーラを飲もうと思った。
しかし、手が全く動かない。手ばかりか、体の全てが動かない。
ただじっと座っているだけの状態である。

コーラを飲むんだ、コーラを飲むんだ、コーラに手を伸ばせ、手を伸ばせ、と自分の体に命令し、右手に最大限の意識を注ぐことで、なんとか手が動き始め、コーラの缶を手に持つことができた。
同様に、口まで運ぶのも至難であった。

症状はどんどん進む。
もう何もできない。
自分の心臓の動きが気になり始める。
鼓動音が異常に速く感じる。
鼓動が気になってしょうがない。
鼓動のことしか考えられなくなってきた。
あまりの鼓動の速さに、止まってしまうのではないかという恐怖感も出てきた。

気がつくと、思考がループしている。
ずっと同じことを考え、何も前に進まない。
ループしていることに気がついているだけマシな気がしたが、どうにもならない。

目を開ければ、モニターの映像がぐるぐる回り始める。
目を閉じレバ、心臓音が気になり、止まってしまうのではないかという恐怖の虜になる。
助けを求めようにも、体が全く動かず、声も出ず、何もできない。

はたから見れば、微動だにせず、ただソファにじっと座っているだけの東洋人でしかないだろう。
しかし、当人は、死の恐怖と闘っているのだ。
自意識が、頭の中をぐるぐると回っているのだ。

助けを求める

しばらくすると、向かいの席に店員と思われる男性が座っていることに気がついた。
この期に及んでまで、羞恥心により助けを求めることにためらいがあった。
自分の中でのしばしの押し問答の後、羞恥心による死より、生が大事だという結論になった。

しかし、体が動かない。
立ち上がることは全くもって不可能だし、声も出ない。
手を上げようにも、やはりダメだ。
目でhelpの合図を送ろうにも、そんな眼力はない。
何もできず、苦しい時間が過ぎていく。

体系的な思考がうまくできない。
どうやって助けを求めるか、途切れ途切れながらも方法を考える。
そして「エックス作戦」を考え抜き、実行にうつした。

まず、相手を見続け、目が合うまで待ち続ける。
そしてついに、向こうと目があった。

すかさず、右手と左手に全神経を集中させ、超スローペースながらも、両腕を顔の前まで持ち上げる。
幸い、相手はこっちを見続けている。
そして、よれよれの両手で、X(エックス)のポーズを取った。
私はバツだ。バツなのだ。助けてくれ。

このポーズが通じるかどうかを考える余地はなかった。
その時の私には、これが最善のSOS信号だったのだ。

店員に救出される

エックスポーズが効いたのか、ただならぬ雰囲気を感じたのか、いずれにせよ店員は、東洋人の謎の動きに気がつき、彼の元に駆け寄り、キマリすぎたことを理解し、手を引いて立ち上がらせた。
そして急で狭い階段を、引っ張りつつ支えながら降ろしていく。
当人は、必死の形相かつ足取りで、一歩一歩進んでいく。

なんとか1階まで降りてきた。
マスターは外の空気を吸えと言い、ジュースを餞別にくれた。

店の外に出た私は、理性にフルコミットする決意をした。
ここで座り込んではおしまいだ。歩いて歩いて、ホテルまで行かねばならぬ。
生きてホテルまで帰るのだ。

ホテルを目指す

店を出て、右足、左足、右足、左足というように、それぞれの足に意識をむけ、一歩一歩進んでいく。
しかし、足を動かしているときは、足のことしか考えられず、自分が今何をしようとしているのかを忘れてしまう。

「ホテルに向かって歩くのだ。」
自分に言い聞かせ、歩く。

店を出て10メートルほどで、最初の難関がやってきた。信号だ。
足だけに向けていた意識を、視界にも向けなければいけない。
信号を認識し、止まったはいいが、そこで思考が停止してしまった。
しばらく、無意に立ち続ける。
なんでここに立っていたのかを忘れ、じっとして過ごす。

しばらくした後、信号が視界に入り、信号待ちをしていたことを思い出す。
アムステルダムの歩行者信号はせっかちだ。
青から赤までの時間が異常に短い。
青を認識し、足を踏み出すまでの間に、赤になってしまう。

何もできず、信号の前で立ち続ける。
何回か信号を見送った後、覚悟を決め、全力を搾り出す。
目で信号を見て、青を認識することに努め、足を前に出す。
他の歩行者の歩く様を真似て、自分も歩く。
なんとか、渡り切ることができた。
信号を渡れたことが奇跡のように感じた。

その後は、マイケルジャクソンのSmooth Criminalくらいの前傾姿勢になりながら、歩道を前へ前へと進んでいく。
自分的には45度くらい傾斜している認識だ。
勢いだけで前に進んでいる状態だ。
完全にイってしまった人だ。

ベンチの誘惑

途中、素敵なベンチを見つける。
座っては絶対ダメなのに、座ってしまった。

ベンチで気持ちを落ち着けようとするが、ガンギマリ状態から全く変化がない。
座ってしまったことで、コーヒショップ同様に、次のアクションが何もできない状態となってしまった。
隣のベンチには、若き女性2人が座っており、おしゃべりをしていた。
一方私は、微動だにせず、じっとし続ける。

これまでは歩くことだけに力を注いていたが、これからは、ホテルの方向を意識して歩かなければならない。
歩くことで精一杯なのに、視界から入ってくる街の景観情報を脳で処理し、現在地点を頭の中の地図情報と照らし合わせながら行動しなければならない。
非常に難易度の高い行為である。
絶望的な状態だ。

どれくらいたったのだろう。
いつのまにか隣の女性たちはいなくなっていた。
立つんだ、立つんだ、立つんだと言い聞かせ、なんとか立ち上がった。
そして再びマイケルジャクソンばりの前傾姿勢で歩き始めた。

進み続ける。
ひたすら進み続ける。

車があまり入り込まず、歩道が整備されているのが幸いだ。
少しづつ、少しづつ、ホテルへと近づいていく。

最後の関門

錯乱した脳であっても、ホテルの場所が確信できる場所にまで辿りつくことができた。
しかし、最後の関門がある。
ホテルのカウンターで、鍵を受け取らなければならない。
私の止まっていたホテルはカード式ではなく、昔ながらのキーホルダー付きのキーであった。
そのため、外出時にはカウンターに預ける必要がある。

脳が錯乱状態でありながらも、カウンターの人に対して、自分の部屋番号を伝えて鍵を受け取らなければならない。
ホテルが近づいてくると、私はこのやりとりのシミュレーションに注力した。
"Hi, My room number is 306"を、何度も何度も声に出す。
口が硬直してうまく声が出ない。
ついでに精神的な疲労により失神しそうになってきた。

ホテルに到着した。 練習通り、カウンターで"Hi, my room number is 306"と伝えた。
もちろん、相手の目をちゃんと見ながら、平然を装ったつもりだ。
受付の女性はハイよという感じでさっと鍵を出してくれた。
無関心さがありがたかった。

そのままエレベーターに突撃し、3Fを押す。
私の視野はどんどん狭まり、一点だけを見て行動するようになっていた。
エレベーターのドアが開き、降りる。
すると、掃除機の蛇腹が廊下に這っていた。
私は廊下になんかあるなくらいの認識で、勢いよく、ピョーンとジャンプをした。
ハウスキーパーのOh!という言葉が聞こえた気がする。

ついに自分の部屋のドアが見えた。
鍵穴に鍵を突っ込み、ぐりぐりして開け、部屋に入った。
ベッドに倒れ込む前に、水を飲んでおかねばという冷静?な考えがよぎり、水道水をコップでごくごく飲み、ベッドに倒れ込んだ。
ついに帰ってこれたという多大な達成感に包まれていた。

一方、心拍はどくどくと激しく、自分はこのまま死んでしまうのではないか。
そして、意識を失った。

目覚め

3時間後、目を覚ました。
まだ酩酊感が残っていたが、従来の精神状態に戻っていた。
凄まじい体験だったなと、過去のこととして認識できる余裕が生まれていた。

外は暗くなりかけていた。
朝からほとんど食事をしていなかったことを思い出し、外へ食事へと向かうことにした。

誰もいない運河沿いを歩いていると、陽気にキマった奴がハイタッチしてきた。

素晴らしい街だと思った。